2月4日に大村市のミライon図書館で開催された、
「絵本がうまれるところ にしむらかえさんの世界」
に参加してきました。
これまでに2度、このtomorrowに登場して頂いている
絵本作家でイラストレーターのにしむら かえさん。
佐世保から東彼杵にお引越しされてからも、
精力的にご活動されているかえさんのお話は、
ユーモアに溢れ、なるほどなぁと考えさせられることも多く、
あっという間の90分でした。
絵本作家である以前に、イラストレーターでもあるかえさん。
講演序盤、イラストレーションとは何だと思いますか?との質問。
『絵?』改めて聞かれると自信をもって答えられません・・・
そこに、ホワイトボートに向かって何やら絵を描き始めたかえさん。
「何を描いているのか、途中でもいいのでわかった時点で答えてみてください!」
とのことで、最初は大きな耳が描かれた時点で「うさぎ!」とすぐに正解が。
次は照れた表情の男の子と女の子の絵。
最後に女の子の手にハートが描かれたところで「バレンタイン!」と正解が出ました。
最後は大勢の人の集まりと、少し離れたところにポツンと佇む男性の絵。
「いじめ?」正解は「孤独」。
簡単な「うさぎ」から抽象的で難しい「孤独」まで、
文字を使わずに絵だけで、できるだけ正確に物事を伝えること。
それがイラストレーションなのだそうです。
学生をしながら、イラストレーターとしてアメリカで活動されていたころ、
絵本に興味はないか?
と大手出版社の編集者から声をかけられました。
そこから道は枝分かれし、『Dinah ! A cat adventure』
(その後日本語に翻訳され、「まんまるねこダイナ」としても出版されています。)が、
絵本第一号として出版されました。
絵本は、アイデアが固まり、お話を書き、ラフスケッチを描き、
出版社との念入りな打ち合わせをし、2年、3年と長い時間をかけてやっと完成します。
そうしてこの世に誕生した絵本たちは、色々な人の手に渡ります。
意味がある、自分にしか描けない絵を描きたいとの思いが、
段々と大きくなっていったそうです。
そんな時、かえさんはかんころもちに出会います。
かんころもち自体は娘さんの好物だったこともあり身近な存在だったそうですが、
ある日、いつもかんころもちを買っているお店の方に、
「かんころもちが食べられなくなってしまうかも。
一度かんころもちの故郷へ行ってみませんか?と誘われ、
『なぜ?』と好奇心が湧いたかえさんはすぐに上五島へ。
そこで、崩壊した干し棚や作り手の高齢化を目の当たりにします。
さらに上五島の教会へも足を延ばし、
高齢の数世帯のみで運営している教会もあることを知り、かんころもちと同様、
教会もいずれ無くなってしまうことは避けられない現実だと痛感したとのとこ。
しかし、避けられないのかもしれないけれど、
知らないうちに、そうなってもいいものなのだろうか?
という思いがかえさんの頭に浮かび、
『そうだ、絵本にすれば子供たちも読める。子供たちに伝えられる。
これは私のすべき仕事だ!』
と絵本にすることを決めたのだそうです。
取材の為何度も上五島へ足を運び、地元の方たちの話に耳を傾けるほどに、
やはり変えられない現実なんだな、と実感。
だからこそ、その事実を知り、
これから私たちはどんな選択をしたらいいのかを考え、
議論するきっかけになる絵本にしたかった、
と微笑みながらも熱く語るかえさんが印象的でした。
絵本を通じてしっかりと、たくさんの人に伝えたい!
かえさんの思いがギュッと詰まった絵本はこうして生まれました。
上五島の方々と接し、島への興味が深まったとのことで、
今後は島が舞台のフィクションの構想もあるそうです。
本が大好きで、本の文化を残していきたいと、
心から願っているかえさんを、これからも応援したいと思います。