真夏の太陽の光の下で、田んぼ一面に青々と茂る稲を目にしました。
どこまでも広がっている田んぼを見ていると、日本の食料自給率の低さが信じられません。しかし、農業離れや高齢化による担い手不足、40%をきった食料自給率、耕作放棄地の拡大、海外の安価な農産物の輸入による影響などの農業問題は現実であり、「農業は衰退産業だ」と思っている人も多いでしょう。未だに「3K」(きつい、危険、稼げない)のイメージも強く残っています。
しかし一方で、日本の農業は変化を遂げている、という話もニュースなどで耳にします。
今回は、現在の農業事情を3つのポイントに絞って考えてみました。
①大規模化
農業は主に『個人の農家経営』と『法人経営』があります。農業総数は2000年には約234万でしたが、2017年には125万にまで減ってしまったそうです。しかし、その中で、法人経営の数は5,272から21,800と約4倍に増えていて、つまり、個人農家が減り、企業が増えていると言えます。
当然、個人で農業を行うよりも法人の方が、より広い農地・より沢山の人材を確保でき、大規模経営を行うことでたくさんの利益を得ることが出来ます。
少子高齢化や小規模農家の離農により農業の担い手不足も進んでいるので、これからもこの『大規模化』の流れは確実に進むと想像できます。
②スマート農業
『スマート農業』とは、【ロボット技術やIoT(モノのインターネット化)、ICT(情報通信技術)等の先端技術を活用し、省力化や生産物の品質向上を可能にする新しい農業】のことを言います。
自動走行のトラクターや田植え機、収穫用ロボット、農業用ドローンなどがスマート農業にあたります。そしてこれらは既に一部の農家・農業法人では実用化されています。
農業は肉体労働のイメージが強いという人が多いと思います。実際、体を動かす作業も多くあります。しかしスマート農業が今後さらに当たり前になることで、肉体労働は減ると言われています。
③ビジネス
現在は従来の農業と異なり、生産・流通・販売まで自由な選択を出来る機会が増えました。
例えば、農業は地域の取り決めによって「作れる物・売れる物」が限られるケースが多かったですが、現在はそれぞれの経営体単位で独自に「売れる物」を考えられるようになりました。
また、インターネットの普及により、卸を通さずに生産者が消費者へ直販をするケースも増えてきました。このように、農業の川上から川下までのそれぞれの過程で、多様化が進むと思われます。
この多様化や前述①大規模化にも関連して、農産物の生産だけではなく加工から販売まで「食」に関する全てを自分で行う農業法人も増えてくると思います。農業=農作業ではなく、食に関する全てのビジネスが農業のビジネスチャンスとも言える時代になりつつあるようです。
それでもやっぱり思うこと
今回、現在の農業事情を調べてみて、確かに大規模化やスマート農業などで農業衰退を食い止めることは大切だと感じましたし、農業所得の向上やロスやコストの削減の面からも、真剣に取り組んでいくべきことだとも感じました。しかし米も野菜も肉も魚も、何でもおいしいこの長崎県に住んでいる私は、一消費者としては、やっぱり従来通り伝統的な手法で、土と太陽と風雨の中、農家の方が丹精込めて育ててくださった物を、いつまでも食べていたいなあとも思いました。
大変難しい課題も多いですが、時代の流れに乗りつつも伝統を守ることも大切だと感じました。